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建物はどう建っているのか

構造物は何を使って作るのか#

建築には、引張力や圧縮力だけでなく、せん断力、曲げモーメント、ねじり力、衝撃力、風力、熱応力など多様な力が作用します。これらの力に対抗するために、さまざまな材料が使用されます。

材料の特性と選択#

  • 鋼(スチール)
    • 強さ:木材よりも強力で、引張力と圧縮力に優れています。
    • 軽量性:アルミニウムは鋼の約3倍の軽さでありながら、同等の圧縮力と引張力を持ちます。ただし、鋼よりも高価です。
  • コンクリート
    • コストパフォーマンス:安価でありながら圧縮力に強いですが、引張力には弱いため、梁として使用する際には補強が必要です。通常、高価な鋼を下部に配置することで亀裂の発生を防ぎます。
    • 耐火性:コンクリートは火災に強い特性を持っています。

弾性と塑性の重要性#

引張力や圧縮力以外にも、材料の弾性特性は構造物の安全性と耐久性にとって重要です。

  • 弾性(エラストシティ)

    • 定義:外力を受けて変形した後、荷重が除去されると元の形状に戻る特性。
    • :ゴムバンドやスチールの微小な変形部分。
    • 役割
      • 外部からのエネルギー(地震や風力など)を吸収し分散させ、構造物全体への集中応力を避けます。
      • 繰り返し荷重や長期使用による累積損傷を防ぎ、材料の疲労や亀裂発生を最小限に抑えます。
      • 構造物が予期せぬ荷重や環境変化に対しても安全に機能することを保証します。
  • 塑性(プラスティシティ)

    • 定義:外力を受けて変形し、荷重が除去されても元の形状に戻らず永久的な変形が残る特性。
    • :粘土や鍛造後の金属。
    • 重要性:塑性がないと、材料は急に崩壊し、警告なしに構造物が崩壊する危険性があります。

部屋の重さ#

建築設計では荷重を表す単位として、アメリカでは「psf(pounds per square foot)」が用いられますが、日本ではSI単位系が主流です。日常的な設計では「kg/m²」、詳細な構造設計では「kN/m²」が使用されます。例えば、アパートの基準荷重は195.28 kg/m²とされています。

鉄骨架構#

建築や工学の分野で「架構」とは、建物や構造物の骨組みやフレームワークを指します。

  • 建築の架構:鉄骨や木材を用いた骨組みの配置。
  • 橋の架構:橋を支える支柱や桁の配置。

鉄筋(Rebar)と鉄骨(Steel Frame)の比較#

項目鉄筋(Rebar)鉄骨(Steel Frame)
主な用途コンクリートの補強材建物の骨組みやフレーム
構造内での役割引張力を補強構造全体を支える
施工方法コンクリートと一体化工場加工後、現場組立
強度特性引張強度高い圧縮・引張強度
耐震性コンクリートと共に提供高い柔軟性と耐震性能
見た目コンクリート内部に隠れる外観や内部に露出
材料の形状主に棒状ビーム、コラム、フレームなど多様

鉄筋コンクリート造(RC造)#

  • 構造:コンクリートと鉄筋を組み合わせたもの。
  • 特徴:耐火性、耐久性に優れ、複雑な形状にも対応可能。
  • 用途:マンション、住宅、橋梁など。

鉄骨造(S造)#

  • 構造:鉄骨フレームを主骨格とし、必要に応じてコンクリートや他の材料を組み合わせる。
  • 特徴:施工が速く、広い空間を確保できる。
  • 用途:高層ビル、工場、商業施設など。

日本の構造分類#

  • RC造:鉄筋コンクリートを主に使用。建築物や一部の橋梁に適用。
  • S造(Steel Structure):鋼鉄を主に使用。高層ビルや大型橋梁に適用。
  • SRC造(Steel Reinforced Concrete Structure):鋼鉄と鉄筋コンクリートを組み合わせた構造。高層建築や耐震性が求められる構造物に使用。

レインボーブリッジは、主に鋼鉄を用いた吊り橋構造としてS造または鋼鉄とコンクリートの複合構造として分類されます。

I形状の鉄骨(Iビーム)#

Iビームは、その断面がアルファベット「I」に似た形状をしている鋼材で、上下のフランジ(水平部分)と中央のウェブ(垂直部分)から構成されます。この形状により、曲げモーメントに対して高い抵抗力を持ちます。

  • 四角形状の鉄骨(角パイプ):全方向に均等な強度を持ち、柱として適していますが、Iビームに比べて曲げモーメントに対する抵抗力が弱いため、梁としての使用には不向きです。
  • 円形状の鉄骨:全方向に均等な強度を持ち、風荷重や地震荷重に対して優れていますが、曲げ強度の効率性が劣るため、梁として使用されることは少ないです。

スラブ#

スラブは建築物の床や天井を形成する水平構造部材で、主にコンクリートやプレキャストパネルが使用されます。スラブは荷重を梁や柱に伝える役割を持ちます。

スラブの役割と特性#

  • 荷重伝達:スラブが受ける荷重(家具、人の動き、設備など)は、Iビームを通じて柱や基礎に伝達されます。Iビームはスラブの端部を支え、荷重を効率的に分散します。
  • 組み立て方法
    • 直接支持:スラブはIビームの上に直接設置され、ボルトや溶接、アンカーボルトなどで固定されます。
    • フランジとの連結:Iビームのフランジ部分がスラブのエッジと接触し、スラブの反力を効果的に受け止めます。
  • 高い曲げ強度と統合:Iビームの高い曲げ強度により、スラブからの荷重を効率的に支え、建物全体の安定性を向上させます。
  • 振動制御:Iビームとスラブの組み合わせにより、床のたわみや振動を抑制し、快適な居住環境を実現します。
  • 施工の効率化:Iビームは標準化された形状であるため、スラブとの接続が容易で、施工のスピードと品質が向上します。
  • デザインの柔軟性:広スパンや複雑なレイアウトにも対応可能で、建築デザインの自由度が高まります。
  • 遮音性:スラブは振動しづらいため、高い遮音性を提供します。

スラブのメリット#

  • 荷重伝達の効率化:スラブが荷重を集約し、梁を通じて柱に伝達します。
  • 構造の剛性向上:スラブが構造全体の剛性を高め、安定性を確保します。
  • 遮音性の向上:音の伝播を抑制し、快適な居住環境を提供します。
  • 耐火性や防水性:火災時や水の侵入に対する防護機能を持ちます。
  • 美観と仕上げ:スラブが仕上げ材の基盤となり、建物の美観を向上させます。

スラブの種類#

  • 構造スラブ:梁や柱に支えられており、強度を高めるために鉄筋を埋め込んだコンクリートが使用されます。地盤沈下の影響が少なく、耐震性にも優れています。地盤が弱い場合でも採用可能です。

    構造スラブ

  • フラットスラブ構造:梁がないスラブで、直接柱に支えられています。

    フラットスラブ構造

マリオン(Mullion)#

マリオンは、建築や窓枠において使用される構造要素で、窓やガラスパネルを分割・支持する垂直または水平の枠組みを指します。これにより、窓ガラスの構造が強化され、デザイン面でも視覚的な区切りが提供されます。

マリオンの役割#

  • 構造的安定性の向上:ガラスパネルを分割することで耐久性と安全性を確保します。
  • デザインの美しさ:建物の外観にリズムやパターンを与え、視覚的な魅力を高めます。
  • 機能的な利点:断熱性や防音性の向上、メンテナンスの容易さを提供します。

あなたが知らない建物の部分#

堅い地盤にしっかりと固定されている杭は「摩擦杭」と呼ばれ、岩盤に支えられている場合は「支持杭」と呼ばれます。杭の頂部に梁を接合し、その上に床スラブを配置することで、建物全体の安定性が確保されます。

建物はどう建っているのか
https://fuwari.vercel.app/posts/2024-12-25-how-to-build-arch/
作者
1eon
公開日
2024-12-25
ライセンス
CC BY-NC-SA 4.0